小学2年生の時に酷い脱毛症を患った。髪の毛はほとんど抜け落ち、まゆ毛もまつ毛まで抜けた。学校に着くとまず教師用の便所に行く。大人用の洗面台を必死によじ上る。洗面台にすっぽり入ったボクは鏡に写った化け物のような自分の姿を眺める。ボクはあの顔を今でも鮮明に憶えてる。あの時の陽射しのさし方すら憶えている。今でもその事をふと思い出すと心臓がズキズキとする。鏡に写った現実を受け止めたら「よし!」と自分に声をかけた。その勢いで教室に入っていくのが毎日の儀式だった。その頃、合唱コンクールがあり母が観に来てくれた。体育館はガヤガヤとしか声がこだましてる。練習と同じ場所に並んで幕が上がるのを待ってると教師がツカツカツカと来て一番後ろにされ段にも上がらせてもらえなかった。幕が上がる。母が一生懸命ボクを探してくれてる姿を生徒と生徒の間からずっと見ていた。あの時から僕は申し訳なさと共に生きてる。